=エッセー= |
一言では語れない島の魅力! |
「大和人(やまとんちゅ)が見た島人(しまんちゅ)」 |
暮らして分かる疑問と素晴らしさ |
地元ミニコミ新聞「ミニミニかわらばん」に大和凡人(ヤマトボント)というペンネームで連載したエッセィです。御感想などいただければ幸いです。 |
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その10「先祖崇拝の島」
お盆ということで各地は帰省ラッシュが起きていたが、島も例外ではなく、今春就職・進学で島を離れていった若者や島を故郷とする方々が帰省され、各町で夏祭りが開催されるなど賑わっていた。また、先祖の墓を清掃してお供え物をあげてお迎えし、お送りするというのは旧暦・新暦や日の違いはあるにしても、全国的に共通しているようである。
ただ島の習慣で驚いたのは、お送りする時に墓前で酒盛りをすることである。この風習は亀津だけのものと聞くが、大勢の人々がそれぞれの墓の前で酒をくみ交わしているのを見たときは異様に映った。なごやかに楽しくご先祖を送ってあげれば、喜んであの世に帰っていかれるという考え方には納得できないでもない。酒を飲むための口実のようにも思えるが、一種の宗教的発想というか先祖崇拝の考えの中から自然に生まれてきたものではないだろうか。
自慢ではないが、私自身人が良さそう見えるのかだましやすそうに思えるのか、在京中は次から次へと駅前など様々な場所で、有名なところから無名の団体まで様々な宗教団体に勧誘された。その事について述べたら、紙面がいくらあっても足りないぐらいである。日本人のように、これだけ多くの宗教がある単一民族はないらしい。受験の時には神や仏に祈り、クリスマスにはプレゼントを渡し、神道も仏教もキリスト教もミックスされている。
しかし、島ではお寺がほとんどなく、お坊さんを見かけることもない。仏教などの文化は、南から伝わってきたと学んだのになぜだろうと疑問を感じていた。聞いたところ、伝来はしているが根付かなかったらしいとのこと。また、お葬式といえばお寺とお坊さんと火葬と決まっているものと思っていた。島では火葬場もあるが、必ずしも火葬と決まっておらず、土葬も今だに行なわれているということを現場に立ち会い初めて知った。
私の実家では、お盆になるとお坊さんがお経を挙げに訪れ、帰られる際にはお布施を渡していた。信じる信じないにかかわらず、お寺の檀家となっていたからである。島に教会はあっても、全ての人々がクリスチャンということもなく、お寺がほとんどないから信仰心がないとういうわけでもない。逆に内地のように、先祖の代からからお寺の檀家となっているという形だけの信者よりも、信仰心は強いように感じる。
歴史的に見れば、離島という海路が断たれれば、外と交流ができなくなる大きなハンディがある中、今日まで人々の生活が続いてきたのは、先祖の知恵や工夫と努力があっての賜と思う。そのような、先祖の姿に感謝する中から、純粋に先祖崇拝という宗教心が養われてきたのではないだろうか。今の自分があるのは先祖の功績によるというのは、紛れもない事実だから、私としても子孫に疎んじられることのないように、自分のなすべき事を成し遂げて行きたいと思う。
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