前文でも述べたが、2011年1月2日大会で52分余り闘い引き分けた両牛による二度目の対決だ。
「優翔大力」は、沖縄で軽量級チャンピオン「丸昇組花形」として2度のタイトル防衛を果たすと、沖縄軽量級優勝旗を返納し6戦全勝の戦歴を引き下げ徳之島へ移籍。2010年10月16日大会に徳之島での初陣を飾った後、「岩下バイソン」と引分けた。
翌、11年10月の全島大会で軽量級優勝旗に挑戦。チャンピオン「綾音無双レイア号」と激しい腹取りの応酬の末に柵際で見事な切り返しを決め、9分26秒で勝利し念願の優勝旗を獲得した。本年1月3日大会で「背白花形」を9分33秒で退け初防衛。5月4日大会では「ボロジノ娘」に14分25秒、10月28日大会は7分24秒で「森山工業孫一号」の挑戦を退け、3度のタイトル防衛に成功している。
攻撃に対する守備が上手く、攻め込まれているように見せながら角先を敵の角の根元などに当て、ダメージを与える試合巧者であり、勝機を見逃さない集中力の高さも抜群で、沖縄を含む11勝1分けという戦歴を誇る。
軽量級チャレンジャーとして名乗りを上げた「岩下バイソン」は、相手の攻めを柵際で切り返し一気に形勢を逆転する返し速攻を武器に、波いる敵を軍門に下し8勝1敗1分の実績を上げている。
08年1月1日大会で「雄天和光号」としデビューし「龍乃介号」に5分44秒で勝利、09年4月から10年10月まで「大蛇王」として出場した4戦は、それぞれ「自治太郎優総」、「池田号」、「赤組武武」、「虎虎大翔」に3〜8分以内で勝利し、技能賞を2回と敢闘賞を受賞して5連勝とした。
その後、その実力牛ぶりにほれ込んだ現オーナーがトレードし「岩下バイソン」に改名。11年1月2日大会で「丸昇組花形(現優翔大力)」と引き分けた後、5月4日大会で「竜虎号」を2分08秒で下し、10月10日大会で「ボロジノ娘」の腹取りを受け、横腹に穴をあけられる大怪我をして初黒星を喫した。
その傷を完治させて挑んだ本年5月3日大会では、「闘魂玲奈」と対戦するが不戦勝。8月14日大会の横綱戦で、「当原戦士栄号」と23分11秒に渡る攻防を繰り広げて勝ち星を掴み、闘牛ファンに健在ぶりを見せつけた。
前回の対戦では、両牛とも相手の攻めを柵際で切り返すのを得意とする受け牛タイプということから、引分けになった面があると思われる。再戦とは言え、当時と同様の対戦内容になることは無いと予想する。
両牛とも数々の修羅場をくぐり抜け2年が経過した今大会では、真っ向勝負の激闘を展開するであろう。角を合わせると同時に「お前か!」と言わんばかりに、あいさつ代わりのワリ技の応酬を見せるはずだ。そこから怒涛の速攻を見舞うのは岩下バイソン。得意の切り返しに持ち込ませないためにも、残す腰を与えること無く一気に相手を柵に張り付け勝負ありとしたい。
もちろん、そのような事態に持ち込ませないよう、柵に詰まること無く体をくの字に曲げて切り返すのが、チャンピオン優翔大力の戦法。鼻で相手をすくい上げながら、敵の懐に飛び込みけりを付けようとするだろう。
リング内の砂に足を取られるなどわずかな隙も決して見逃さず、ここぞとばかりに攻勢に転じ勝ち星を重ねてきた両牛だけに、集中力の高さが雌雄を決する。軽量級ならではのパワーとスピード溢れる攻防に場内は興奮のるつぼと化し、ファンの期待にたがわない激闘が披露されるはずだ。勝利の女神はどちらに微笑むか。
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