【大会の見所】 |
昭和53年生まれの徳之島3町の青年団が企画、主催する大会だ。「ダイキ花形」対「 邁進龍」の中量級優勝旗争奪戦はもちろん、全島一チャレンジャー決定戦とも言える「基山商事運送力進」と「三代目関東ルビー」の横綱戦、連勝牛対決の「一心ゴバヌー」対「将力王」のスペシャルマッチ、「fighting大吉」と「前心 丹向橋牛」の封切戦にも闘牛ファンの熱い視線が注がれている。若手からベテランの実力牛が多く出場し、迫力溢れる攻防で厄払いに華を添えるものと思われる。
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〈中量級優勝旗争奪戦〉ダイキ花形vs 邁進龍 |
チャンピオン「ダイキ花形」は、昨年1月大会のデビュー戦で「大幸」を10分強で下し、殊勲賞を獲得した。デビュー前から、ツキ・カケ・速攻の三拍子が揃った実力牛としての評価が高いがゆえに対戦を躊躇され、本場所の間隔は空いたが、その才能を見込んだ現オーナー・盛英樹氏がトレード。栄えある優勝旗挑戦を向えた10月大会で、闘牛ファンの度肝を抜く返し速攻を見舞い「大愁龍勇気」を2分弱で敗走させ、悲願の中量級優勝旗を獲得した。
チャレンジャー「邁進龍」は、デビュー戦での優勝旗挑戦である。沖縄本島産の6歳牛で破壊力抜群の速攻を武器とし、技の切れと気性の荒さは群を抜き、地元稽古場所において本場所を踏んでいる先輩格を敗走させるなど、その猛者ぶりを沖縄まで轟かせている。
ダイキ花形は10月大会の優勝旗を奪取した一戦が記憶に新しく、互いに速攻を得意とするだけに、闘牛ファンの多くは、土煙を上げて腹取りの応酬を繰り広げる短期戦を待ち望むはずだ。
対戦開始から目の離せない攻防が展開され、リングを目いっぱい使った腹の取り合いとなるのは間違いなく、敵の隙を見つけ一気に懐に飛び込んだ方に勝利の凱歌が上がるはずだ。優勝旗を手に祝杯に酔いしれるのはどちらか。
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〈横綱戦〉基山商事力進vs三代目関東ルビー |
「基山商事力進」は、昨年5月大会で「爆進大地」との20分を上回る長期戦を制し、現オーナーにトレード。本年3月大会は「闘将眞也」に勝利し、5月2日大会の横綱戦では、「徳之島台風」にワリ技を見舞い一気に戦意を喪失させた一戦は記憶に新しく、3連勝と勢いに乗っている。
対する「三代目関東ルビー」は、本年1月大会がデビュー戦。「闘牛戦隊黒」、「きらめき(秀)(ヒデマル)」、「上原ジャイアン」を短期戦で下し、こちらも3連勝と上げ調子である。更に、10月大会では、対戦相手の出場取り消しという予想外の事態もあり、この一戦を制しうっぷんを晴らしたいはずだ。
基山商事力進は、広いリングを目一杯使いながら敵の足下が軽くなるのを待ち、相手得意の速攻を凌ぎつつ、得意の長期戦に持ち込みたい。
三代目関東ルビーは、角カケで敵の首を捻じ曲げてぐいぐいと押し込み、相手がカケ技を外そうとしたところで間髪いれず下からすくい上げ、一気に柵まで突っ走り追い打ちを決め勝負ありとしたいはずだ。
ツキ技を見舞いながら、角カケに入り速攻を狙う三代目関東ルビーに対し、基山商事力進は、慌てることなく真骨頂の粘りで踏ん張るものとみられるだけに、対戦タイムが勝敗を左右しそうだ。
10分前後で仕留める事が出来れば三代目関東ルビー、その時間を上回れば、基山商事力進が有利な展開になるものと予想する。横綱戦ならではのパワー溢れる激闘となるであろう。
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〈厄払いスペシャルマッチ〉一心ゴバヌーvs将力王 |
「一心ゴバヌー」は、八重山で勝利後に徳之島へ移籍。本年1月大会の「戦闘風怒琉」戦を制して地元デビューを決め、5月大会は「戦闘ムサシ」に勝ち3連勝とした。角カケからの速攻を武器にさらなる活躍を目指したいところ。
対する「将力王」は、本年3月大会で「赤力」を退けデビュー戦を飾ると、5月大会の「天願狼」との激闘に8分弱で勝ち星を挙げ、攻めも守りも巧みな試合巧者ぶりを見せつけている。
両牛とも角カケを得意とするだけに、ツキ・ワリ技の応酬から角カケに持ち込み、速攻を決める速さと勝機を見逃さない集中力の高さが、勝敗の行方を左右するものと予想される。一心ゴバヌーがスピードの差を見せ4連勝とするか、将力王が抜群の集中力で連勝を3に伸ばすことができるか。柵際に詰まっても駄目押しを決められない限り、片方が背を見せて敗走することは無さそうだ。
観客は、スペシャルマッチに相応しい激闘を堪能するであろう。軽量級ならではのスピーディーな技の応酬が場内一杯に繰り広げられ、会場が熱狂するのは間違いない。
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〈封切特別戦〉fighting 大吉vs前心 丹向橋牛
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「fighting 大吉」は、本年6月大会に「小前田グループパンダ号」勝利しデビュー戦を飾ると、先の10月大会で「天心だだ」を退け連勝中。体重600kg台半ばの小兵ながら、大きなヒラ角を武器に相手の技を防ぎ勝ち星を上げている。
対する「前心 丹向橋牛」は、今大会がデビュー戦。伊仙町の闘牛どころである目手久に牛舎を置き、地元の名牛に鍛えられた速攻の切れ味は逸品で、闘争心の強さが持ち味と聞いている。
闘いの派手さで圧倒してくる丹向橋牛の攻めを、fighting大吉がどこまで凌げるかにかかっている。対戦開始早々、あいさつ代わりのワリ技から角カケに入り、一気に柵に押し込めば丹向橋牛に勝機到来。
一方、柵際で上手く回り込みながら、相手に攻め疲れが出るのを待つ戦法に出ることができれば、fighting大吉に勝機が見えてくる。あっという間の短期戦で決するか、見ごたえ十分な長期戦になだれ込むか。封切戦ならではの激戦が期待される。
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(平成26年12月29日付南海日日新聞に執筆) |