【大会の見所】 |
封切特別戦の「拓真嵐白山号」対「北天勝狼」から、将来有望な若牛の激突で開幕する。連勝牛同士の対戦である「森兄弟進宝」と「小岩パンダ」の指名特別戦は、攻守の入れ替えが激しそうだ。そして、全国の闘牛ファンが注目する「健祥会☆戦闘たくま」対「牛若丸牧山号」の全島一優勝旗争奪戦、並びに「吉村畜産 闘将☆マングース」と「昭和51年生 天龍紫月」のミニ軽量級優勝旗争奪戦は、ファンならずとも見逃せない激闘必至の取り組みだ。
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〈全島一優勝旗争奪戦〉健祥会☆戦闘たくまvs牛若丸牧山号 |
チャンピオン「健祥会☆戦闘たくま」は、沖縄から移籍後の2012年10月「なくさみ館」?落し大会でデビュー。「亀山武熊号」に7分弱で勝利すると、翌年5月大会はベテラン牛「森新白虎」、続く10月大会に「55同志会」を17秒で敗走させて3連勝とし、全島一横綱チャレンジャー候補に躍り出た。
未だに脳裏に刻まれている10月の全島一優勝旗争奪戦において、迫力満点のワリ技の応酬で場内を一気にヒートアップさせ、チャンピオンの怒涛の攻めに対し再三回り込み闘争心を失うことなく戦い続け、17分弱の熱闘の末に悲願の優勝旗を奪取。今大会で初防衛を狙う。
チャレンジャー「牛若丸牧山号」は、12年8月大会で「朝戸花形」を退け初陣を飾り、昨年5月大会では「花榎心大王」に勝利し、今年1月大会で「紀乃工業号」と激突。敵の得意技を破壊力抜群の角カケで封じ3連勝とした。徳之島並びに沖縄で横綱牛として活躍した「天龍狼」の血統で、そのカケ技は正に父親譲りと言えよう。勢いそのまま全島一王座獲得を果たしたいところだ。
得意の角カケで先に仕掛けるのは、牛若丸牧山号であろう。そのまま敵を柵に張り付け敗走させようとするはずだ。但し、それぐらいで戦意を失わない相手であることは前戦で明らかであり、体を反転させて真っ向から対峙することの無いよう、横腹に角を突き刺すほどの追い打ちを決めねばならない。
一方、チャンピオン・健祥会☆戦闘たくまは、前回披露したようなパワーあふれるワリ技で相手の戦意をトーンダウンさせたい。角カケからの腹取りには、リングに詰まる前に回り込み、体重を乗せた首もたせでじわじわとスタミナを奪うはずだ。
全島一横綱戦に相応しい迫力あふれる攻防が繰り広げられ、闘牛、勢子、応援団と観客が一体となった激闘必至の大一番となるのは必至である。錦の御旗を掲げ凱歌を上げるのはどちらか。
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〈ミニ軽量級優勝旗争奪戦〉吉村畜産 闘将☆マングースvs昭和51年生 天龍紫月 |
チャンピオン「吉村畜産 闘将☆マングース」は、2011年5月大会の「阿権少年団智哉岩力」との対戦を皮切りに、「琉誠嵐」、「SEIKA.Jr.獅子王」、「ぐるくん」、「闘天ぶちかまし永岡号」、「コブラ」、「友志ゴールド」と無傷の7連勝とし、本年1月大会は「闘天ぶちかまし永岡号」との再戦を制し、栄えある優勝旗を獲得した。続く5月のタイトル戦では、チャレンジャー「治野兄弟将龍」を22分弱で退け初防衛を果たし、10月大会に「大龍」を29分で退け通算戦歴を10連勝としている名牛である。
圧倒的強さを誇るチャンピオンに挑み、悲願の優勝旗奪取を狙う「天龍紫月」は、10年1月大会で「Mr.剛力」の連勝に土をつけデビュー戦を飾ると、翌年5月から「徳之島台風2号」、「澤村号」、「闘将闘龍武誠号」を下し、全大会で3賞を獲得して4連勝とした。12年5大会は「黄金矢」に敗れ連勝がストップしたが、今年5月大会の復帰戦で「天心パンダ友陣号」を退け健在ぶりを披露し、悲願の優勝旗挑戦に名乗りを上げた。
闘将☆マングースは王者のプライドを見せ付け、11連勝として3度目のタイトル防衛に華を添えたいはずだ。チャレンジャーの破壊力抜群の速攻をまともに受ける訳には行かず、カブラ気味の角を生かした友好打で敵にダメージを与え、早々の戦意喪失を図りたい。
対する天龍紫月は、体重差を生かした怒涛の攻めを決め短期戦で勝敗を決したいところ。対戦タイムが長引けば長引くほど、攻守に係わらず相手の鋭利な角によるダメージが大きくなるのは、歴戦のチャレンジャーを見れば明らかだ。
チャンピオンが安定度の高さで防衛するか、天龍紫月が爆弾速攻で圧倒し新チャンピオンの誕生となるのか。小型牛ならではのスピーディーな技の応酬で、会場がヒートアップするのは間違いない。優勝旗を先頭に歓喜の舞を披露するのはどちらか。
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〈指名特別戦〉森兄弟進宝vs小岩パンダ |
「森兄弟進宝」は、昨年5月大会で「fighting 牛」に勝利しデビュー戦を飾ると、3月大会は「旭天鵬」、8月大会において「みゆわのパンダ巧大」を11分半の熱戦の末に制し、ツキ技の巧みさを見せ付けた。勝機を見逃さない集中力の高さと守りの堅さにも定評があり、安定度は抜群である
対する「小岩パンダ」は、12年5月大会でデビュー。「虎太郎パンダ」に4分強で勝ち星を上げたが、同年4月末大会では「一撃小僧」に惜敗。昨年1月大会の復帰戦は「西松兄弟号」に勝利すると、6月に「貌天龍」、今年1月大会で「弦龍王」を18分弱で退け殊勲賞を獲得し、現在3連勝中だ。
森兄弟進宝は得意ツキ・ワリ技を見舞ながらどんどん前に出るはずだ。そのまま敵の懐に飛び込み、粘られる事無く勝敗を決したい。対する小岩パンダは、相手の荒技に角カケで耐え、速攻から追い打ちを決められる事無く凌ぎ切れるかだ。首力で上回り先に得意の体勢に持ち込めるかどうかが、勝敗の行方を左右するものと予想される。
観客は、指名特別戦に相応しい激闘を堪能するであろう。小型牛ならではの目まぐるしい攻守の入れ替えが場内一杯に繰り広げられ、会場が熱狂するのは間違いない。
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「拓真嵐白山」は、本年5月2日のナイター大会で、2連勝中の「福島牛」と対戦。30分を上回る激戦の末に勝利し、敢闘賞を獲得するともに根性の強さを見せつけた。昨年1月大会は「大幸」を35分余りの長期戦の上に制し、成人杯優勝旗を獲得。8月大会で「なんくるナイサー」を3分半で敗走させ、現在3連勝中である。
対する「北天勝狼」は、昨年6月トライアスロン記念大会において、「東天龍海輝」に7分17秒で勝利。先に紹介した牛若丸牧山号と同様に「天龍狼」の血統を持ち、地元浅間で生まれ、父親譲りの角カケを必殺技に更なる活躍が期待されている。
今後益々の成長が楽しみな両牛だけに、ここで勝敗を決するのはもったいないが、致し方ないところ。序盤は互いに相手の出方を見ながら、徐々にエンジンをかける展開になるであろう。
角カケを得意とする両牛だけに、取り合いとなれば角の長さで上回る北天勝狼に歩があると言える。拓真嵐白山号は、カケ技を外すと同時にツキ・ワリ技を見舞い、相手の焦りを誘えば願ったり叶ったりだ。
一方の北天勝狼は、敵の角の根元をがっちりと掴まえツキ技を防ぎ、徐々に敵のスタミナを奪いたい。両牛はもちろん、両牛のオーナーとしても何としても勝利し、その先にある頂点を狙っているはずだ。
全島一大会封切戦が持つ独特の雰囲気に呑まれること無く、自らのペースに持ち込めば勝機が到来し、浮足立った方が負けだ。目の前の敵を倒すという集中力を保ち続けた方が、連勝を伸ばすであろう。封切対戦を制し、勝利の美酒に酔えるのはどちらか。
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(平成26年12月29日付南海日日新聞に執筆) |