【大会の見所】
|
2012年10月27日の中量級チャンピオン決定戦で王座を獲得し、本年1月2日の大会で初防衛を果たした「勇闘星」だが、足の故障のため今大会への出場を断念せざるを得なくなり、闘牛ファン期待の中量級優勝旗争奪戦が取り消しとなった。闘牛連合会規約に定められた40日前の計量日に規定の体重をクリアーはしたものの、当日から不調を訴え、なんとか大会に出場しようとぎりぎりまで懸命の治療に取り組んだ末でのことであり、休養十分で復調しその雄姿を披露してくれるよう願いたい。
そのため大会は全9組となったが、沖縄から徳之島を又にかけて活躍し、中量級王座に挑んだ「豊島美勝ひとみ号」、「関西ライン玄」が、地元たたき上げの実力牛「東天龍孔羽亜号」「大樹」とそれぞれ対戦する大関戦と関脇戦、現在2連勝中の「Fighting闘牛」に前評判の高い「森兄弟進宝」が挑む指名特別戦、ツキ技得意の両牛による真っ向勝負が期待される「躍進花形さくら」対「伐折羅天龍」の封切戦など、小型から大型牛までの好番組が組まれており、闘牛ファンならずとも必見の取り組みの連続となっている。
|
〈ミニ軽量級優勝旗争奪戦〉Mr.剛力vs大沢号 |
チャンピオン「Mr.剛力」は、2009年4月の大会で「YMTフレンズ笑軍」に19分52秒で勝ち、敢闘賞でデビュー戦を飾った。10年1月の大会で「天龍池山」に21分51秒の長期戦の末に惜敗するも、同年5月の大会でベテラン「突撃三虎あやね」に11分01秒で勝利し敢闘賞を受賞。11年5月大会では、「竜翔たくま」を相手に12分30秒で殊勲賞の勝ち星を上げた。
12年1月の大会で「古堅モータース小鉄」との対戦を10分41秒で制し、成人杯優勝旗を獲得、同年8月の大会に13分39秒で「前村鬼若」を退け5勝1敗とした。本年1月の大会でミニ軽量級チャンピオンに挑戦。すさまじい攻防を繰り広げ20分弱で勝ち星をもぎ取り、悲願の優勝旗を獲得した。攻守のバランスが良く、勝機を見逃さない集中力の高さは群を抜いている。
チャンピオンの初防衛を阻もうと挑むチャレンジャー「大沢号」は、2009年5月の大会で「海宝丸」に21分48秒で勝ちデビュー戦を飾ると、沖縄にトレードされた。11年8月の大会で「突撃台風」の名で、徳之島から移籍した「46白タビ」と封切戦で対戦。13分22秒で敢闘賞を獲得する勝ち星を上げた。
その後、徳之島にトレードされ12年5月の大会で元ミニ軽量チャンピオン「突撃TSチワワ」に挑み、両牛とも舌出しなる長期戦の末に40分47秒で殊勲の勝利を掴み、王座挑戦へ名乗りを上げた。
チャンピオンMr.剛力は、序盤から怒涛の攻めで圧倒するはずだ。長期戦になるのを避けるためにも、ツキ・カケ・速攻の3大技を連続的に繰り出し、相手に付け入る隙を与えず勝機を掴みたい。
対する大沢号としては、じっくりと相手の攻めを受け流し、なるべく長期戦に持ち込みたいものと思われる。敵に攻め疲れが見え足下が軽くなるのを待ちたいはずだ。スタミナを消耗したところを見計らい一気の速攻を決めれば、さすがの連勝牛でも戦列から離れざるを得ないからだ。
チャンピオンが破壊力抜群の攻めで初防衛を果たすか、新チャンピオンの誕生となるのか。優勝旗争奪戦ならではの緊張感に包まれる攻防になるのは間違いない。優勝旗を手に、勝利の舞を披露できるのはどちらか。
|
〈指名特別戦〉Fighting闘牛vs森兄弟進宝 |
「Fighting闘牛」は2012年7月の大会がデビュー戦で、「闘将パンダ」に18分10秒で勝利し。本年1月の大会は「戦闘三無月」に戦意が無く不戦勝で、2連勝とした。徳之島産の4歳半牛で、ツキ技からの速攻を得意としている。
対する「森兄弟進宝」は、今大会がデビュー戦。同じく徳之島産の4歳半牛で、ツキ技と角カケには定評があり、指名特別戦への出場となった。
既に本場所を経験しているFighting闘牛に対し、初陣の森兄弟進宝が前評判通りの実力を出し切れるかが最初のポイントだ。互いにつき技の応酬から、隙を見計らって速攻を決めたいFighting闘牛に対し、角カケで相手の前進を止めそのまま切り返し速攻を狙う森兄弟進宝の攻防が、場内狭しと繰り広げられるものと見込まれる。
小型牛ならではのファイトあふれる熱戦に場内ではラッパや太鼓、応援団の歓声が鳴り響くであろう。Fighting闘牛が3連勝と勝ち星を伸ばすか、森兄弟進宝が初陣を飾ることができるか注目の対戦だ。
|
〈封切特別戦〉戦闘荒鷲vs富士皇〈封切特別戦〉躍進花形さくらvs伐折羅天龍 |
若手実力牛として評判の高い両牛が封切戦で激突する。「躍進花形さくら」は、2012年7月の大会で「あっぱれタッチュー」に不戦勝でデビュー戦を飾り、本年1月の大会で「劉惺パンダ楽人」に5分43秒で勝利し2連勝とした。あいさつ代わりのツキ技を見舞い、ヒラ角を生かした速攻を得意とする徳之島産の6才牛だ。
対する「伐折羅天龍」は沖縄本島産の5歳半牛。12年4月の大会で、「パンダファミリー白竜皇」に9分15秒で勝ち敢闘賞でデビュー戦を飾り、同年10月の大会で「戦闘荒鷲」に7分15秒で惜敗したが、内側に湾曲したいわゆるガン角を有効に使い、相手にダメージを与え勝機を掴む荒技牛ぶりは健在だ。
躍進花形さくらは、相手に武器を使わせず自分のペースに持ち込むためにも、体重を乗せた速攻で一気に柵際に攻め込もうとするだろう。勢いよくツキ技を見舞い、相手がひるんだところで一気の腹取り速攻を決め勝負ありとしたい。
一方の伐折羅天龍としては、角カケで得意技を封じじわじわと前に出たいところ。ガン角を生かして相手の角の根元や眉間を傷めつければ、敵のスタミナを奪い勝機が見えてくるだろう。
どちらが相手の攻撃によるダメージ最小限に抑え、いち早く自分のペースに持ち込めるかで勝敗が決するはずだ。封切戦ならではのツキ・ワリ、角カケの応酬による激闘が展開されそうだ。?
|
(平成25年4月28日付南海日日新聞に執筆) |